もう一つ、私が大事にしていることがあります。それは「フェアであること」です。フェアでありたい……そう考えるようになったのは、大学時代の出来事がきっかけです。

私は、浪人させてもらって九州大学に入り、アメフト三昧の毎日を過ごし、留年もしてやっと卒業したような人間です。両親、周囲の仲間に恵まれた環境で育ったなと自覚しています。しかし、それはただ私の運が良かっただけだということに、大学に入ってわかったんです。

私の同級生に、私よりもずっとアメフトに向いた体格をした友人がいました。彼は、運動能力も高く、本人もアメフトに興味があった。それにも関わらず、家庭の問題で部活をする余裕がなかったのです。納得がいかなかったし、なんて理不尽なんだろうと思いました。しかし、そういったことは、意識して見渡すとたくさんあったのです。

また、リクルーター時代に出会った学生は、東京大学に合格できるだけの学力があったにも関わらず、東京に出るお金がないからという理由で九州大学に来ていました。いくら九州大学が九州ではトップクラスの大学とはいえ、日本最高学府の東大とは当然ながら比べ物になりません。なのに、諦めたというのです。他にも、就職活動がなかなか進んでいない子に話を聞くと、「興味のある会社の説明会が東京でしか開催されなくて、自腹ではとても行けない」と言う。地方に住んでいるということが理由で、情報が遮断され、機会が奪われてしまっているのです。「それはフェアじゃないだろう!」と憤りを感じました。

私は、誰も彼も“平等に”拾い上げる必要はないとは思っています。頑張らない人、努力しない人までを助ける必要はありません。ただ、「チャンスは誰にでも公平に与えられているべきだ」と考えています。そこからつかみ取れるかどうかは本人の努力次第ですが、チャンスそのものが金銭的事情や企業側の都合で与えられない人が出てくるのはおかしい。そう思ったのです。

ですから、私は「社会人として、大学アメフト部の役に立てるならば」と企業をいくつかピックアップし、福岡まで来て説明会を開いてもらえるように交渉しました。アメフト部のメンバーは優秀だったので、企業側にとっても優秀な人材と出会えるのはメリットになるだろうという自信があったのです。実際、何人もの学生と企業でいいマッチングができたので、交渉した甲斐があったと思っています。

この「フェアでありたい」という気持ちは、仕事においても私のベースになっています。例えば、私は依頼受けて、生命保険会社の営業マン向けに勉強会を行っています。その際に必ず、「お客様に自分の都合のいい情報だけを伝えて、他の金融商品のメリットや、NISAやiDeCoといった公的にある良い制度を一切教えないというのは良くない」といった話をするようにしています。なぜなら、情報を遮断して都合の良いように操ろうとするのは、フェアじゃないからです。

きちんと説明した上で、何を選ぶかはお客様次第。そしてお客様に有益な情報をどれだけお届けできるか、そこでどう選ばれるか、だと思っているからです。 今は情報社会です。お客様だって調べたらいろいろなことがわかる時代になりました。だからこそ、不用意に不安を煽るようなことをするのではなく、お客様の隣で、お客様に必要なもの・不要なものを一緒になって選んでいく。そういったサポートをしていく中で信用を得て、ファンになっていただかなければならないと思っています。もちろん、彼らにそう伝えるだけでなく、私たち自身もそういった考えで働いているのです。

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